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QRPキットの販売によせて
近代技術の発展の結果として物を作る側と使う側がはっきりと別れてしまいました。
エレクトロニクスの世界でも表面実装技術の進歩などによって、人が手で組立てていたプリント基板でさえコンピュータ制御された自動実装マシンが取って変り、安価に大量のエレクトロニクス機器が生産されています。
アマチュア無線の世界も自動化、量産化の技術を背景にプロ級の性能を持つ高性能無線機が部品を個別に買い集めるより安い価格で市場に提供されています。 仮に自作の通信機を作るとしても実用性まで考慮すると市販の通信機並みの性能を持つ必要があります。
現代版の通信機器はカスタムのICと内蔵CPUによるプログラム制御により性能と機能を得ています。
これらの通信機を自身で設計、制作しようとすると高周波技術だけでなくコンピュータのインターフェース技術やプログラム開発の能力までも必要とします。
仮に設計がクリアしたとしても基板の製作、部品集め、調整、調整のための測定器の調達など数多くの困難が待ち構えています。
こうした事から独力で自作リグを開発してオンエアする楽しみは、技術があり測定器を使える環境にあるほんの一部の人にしか許されない物になってしまいました。
今日では部品点数が少なく、大型部品を使う量産化の効果が出にくいリニアアンプなど、ほんの一部の分野が自作の分野として残されているに過ぎません。
アマチュア無線の作る喜びは絶滅寸前の状態です。
技術を愛好するアマチュアを今育てなければ、このままではアマチュア無線の将来は決して明るいものではありません。 しかし適当な入門用のセットが見当たらないのが現状です。
いずれも米国シリコンバレーの一流のエンジニアが、アマチュアのために腕によりを掛けて設計したキットで入門用からCPU制御の本格派まで取り揃えて日本に上陸しました。
これらのキットを手にして組み立て、調整、改造と進んで行けば自作の楽しさ、充実感が貴方のものになります。 必ず出来る事を約束する事は出来ません。
それは貴方に依存する部分が大きいからです。
キットとは本来そうした物です。 組み立てが何の問題も無く動作してしまうとかえって学ぶ事が少ない物です。 何事もなければ一日で完成しますが、だめな場合はどのくらい時間がかかるかは分かりません。 最も簡単な方法は機械的な点検です。
信号を追ったり、回路の動作を考察しながらトラブルシューティングをするのが王道ですが、たいがいは組み立ての上の間違いで動かないのです。
間違いを苦心の末に発見し動作した時は大きな喜びと感動に浸る事ができます。 マニュアルを良く読む事が大切です。 また参考資料を集めて勉強するのも良いでしょう。
これらの全てが技術の向上と完成の喜びにつながって行きます。 そして運用を始めればQRPは一生の友となるでしょう。 改造によって性能と貴方自身の技術も高めましょう。
初心の方はできるだけ部品点数が少なく調整個所の少ないSSTあたりから始める事をお勧めします。
勿論サポートはいたしますが、製作過程で必ず遭遇するトラブルはまずあなた自身が解決の努力をして下さい。 行き詰まったら近所のOMさんを探して下さい。
助けてもらいながら作る楽しみを分かち合って下さい。 どうしても分からない時、我々を当てにして結構です。 しかし初めから当てにしない事が貴方に取って、とても大切な事です。
開発のコンセプト
* 安くないが楽しい−完成品と比較して安くはありませんが、作る楽しみを買って下さい。
* 完成は保証しません−完成は保証されません。 キットは部品を買うのです。
* QRP 12V電源で2Wの出力、K2は10W
* シンプルな回路構成 シングルスーパー、IC化
* 実用的な機能 AGC,RIT、サイドトーンなど基本的な機能は維持
* 移動運用に適した小型軽量 アンテナもBNCコネクタ
* 組み立てやすさ ジャンパや盤間配線を無くしたスッキリ構成
* 高感度 - 137dB(NorCal40など)の実力
* 余裕のスペース−ケースの内部は50%がフリースペース
* 改良の余地 マニュアルに改造のヒントが満載
* 実用的なオプション−エレキー、メモリーキー、周波数カウンタなど
* 再現性 IC、トロイダルコア、固定インダクタ採用で高い再現性
* 測定器なしでも調整できる
* 充実したマニュアル 多くの声をマニュアルに反映
* 表面実装部品を使わない 組み立て、部品交換が容易
* 入手しやすい部品を使用 故障の場合の入手、改造が容易
* 半田ごてとドライバで組立て可能
* 調整が容易 つぼを心得た半固定パーツの使用
* キットとしては以下の事を目標にしています。
* ケースを含む完全キット
* 欠品を出さない
* 半完成品ではない
* コイルも自分で巻く完全自作スタイル
* オプションによる発展性
キットの持つ問題点とその解決そして未来
キットの販売が衰退した一つの問題に技術サポートのコストアップがあります。
一番重要な事は設計が良いと言う事です。 再現性の悪いセットは作る側に大きな負担をかけます。
キットは完成品以上に完成度の高い設計技術が要求されるのです。 我々のキットはこの事を最も重要課題として回路を練り上げています。
完成した基板とケースを供給しドライバで組立てるだけにすると言う方法もありますが、これでは自作とは名ばかりで作るといっても儀式のたぐいでしかありません。
困難であっても作る以上は作ったと言える内容でなくてはなりません。
マニュアルの内容もとても重要です。
回路の部品の抵抗1本にいたるまで何のためにどうしてこの値が使われているのか、設計上の意味があります。
全てを解説したら教科書になってしまいます。 残念ながらそこまで詳細な解説できませんが、作り、調整し、改造する過程を通して総合的にこれらの意味が把握できるよう努力しています。
マニュアルも長い時間をかけて多くの質問をさばきながら版を重ねて来た歴史を持っていますし、これから皆さんと共に改良され成長して行くでしょう。
技術を愛するアマチュアが仲間の輪を増やし皆で育てて行く、そんなキットを提供したいのです。
1998年8月
エレクトロデザイン株式会社 木下重博 ( JA8CCL )
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